Scene.7 時のゼノクロノスより引用
「まったく、この老骨にはいささか厳しい戦いだな」
深い森の中、シュラークフィーダーとジェス・ラーディエルは魔物の集団と戦っていた。
「頼りにしてるぜ」
ジェスが光輪雷鳴剣デュアルディークに力を込める。そこから放たれた雷撃が一直線に魔物達を屠った。
「こるりサンのところまでもう少しなんだ。もう少し手を貸してくれ」
この戦闘は前回の戦いに端を発する。
前回の戦いでアーウィンの身代わりとなった鹿原こるりは魔族の追撃をかわす事が出来ず囚われの身となってしまった。
ジェスは長い探索の旅の末ようやくその居所を突き止めた。
そして信用できる相手としてシュラークフィーダーに助力を求めたのであるが。
もう何匹の魔物、魔族を倒しただろう。
紳士の正装に身を包んだ魔族の男がこるりを抱えるようにして現れた。
「こるりサン!」
「お目当てのものはこれだろう」
魔族はこるりをジェスへと寄越した。
「ジェスくん……!」
「こるりサン?!」
ジェスはこるりを抱き締めると、不思議そうにその魔族の男を見遣る。
「サピエンティアの配下が手土産として連れてきたものだが、偽者には興味がない」
なんだ。
この威圧感は。
対峙しているだけで総毛立つ。ここから立ち去れと本能が警告を発している。
「それにこの娘、自分は未来を知る事が出来ると命乞いをしていたが、あいにくと私には不要な力だ」
ジェスは背後に気配を感じて振り返った。
先程まで前にいたはずの魔族の男がすぐ背後に立っていた。
移動した気配などまるで感じなかったのに。
「何故なら時は私と共にあるからだ」
「てめえ、何者だ」
ジェスは問い掛けた。
「ジェスくん、この男は……プレイヤーの一人よ」
こるりが代わって応じる。
「『時のゼノクロノス』……時間を操る事の出来る魔族」
「時間を操るだって?」
ジェスは震える手でデュアルディークを握った。
そのままゼノクロノスに斬りかかる。
しかし、背後にいたはずのゼノクロノスは、今度は少し離れた場所に立っていた。
「無駄だ、貴様達では私に指一本触れる事は出来ない」
考えろ。
ノルンがかつて時流を溯った時にはしばらく同じ力が行使出来ないほどに疲労した。
時を操るといってもあくまで短時間、しかもそれなりの消耗を伴うはずだ……
「私が用があるのは本物の覇王の卵のみ。またすぐにあいまみえることになろう。人間の英雄達よ」
そんな言葉だけを残し、ゼノクロノスの姿は森から掻き消すように失われてしまった。
がくん、とジェスの膝から力が抜ける。
「ジェスくん!」
こるりが慌ててその体を支える。
「わりい。ちょっと気が抜けてよ」
全身が汗で濡れていた。
それはシュラークフィーダーも同じようだった。額を拭いゼノクロノスの消えた辺りを見つめている。
「時を操る……サピエンティアと同等、いや、それ以上の能力だな」
「でも……」
こるりが呟いた。
「あれを倒さないと私達に『未来』はない」
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