Scene.2 東京タワーにてより引用
「みんな、戻ってから一ヶ月後、東京タワーの展望室に昼十二時に集合! 約束だからね」
現代に戻る直前に皆と交わした約束通り、獅堂千晶は観光客で賑わう東京タワーを訪れていた。
妙な土産物など覗いていると、人込みの中から見慣れた二人が周囲を探しながら歩いて来るのが見える。
「こるり、ジェス!」
千晶は手を振った。
「お久しぶりです、千晶さん」
「オス」
鹿原こるりとジェス・ラーディエル。ジェスのほうは現代の衣服に身を包んで、外人の観光客も多いこの展望室では何の違和感もない。
「ジェス、もうこっちでの生活には慣れた?」
「ジェスくん、教会で住み込みで働いてるんですよ」
「へえ、今でもそう言う人を受け入れてくれたりするんだ」
千晶は感心した。
「まあ、訳ありと思われてるのかあまり尋ねられずにいるよ。最近じゃ買い物も任せてもらってるんだぜ」
ジェスは少し自慢げだ。
「で、どうなの。二人のその後は」
千晶はこるりに囁きかけた。
「それが……」
こるりは少し口篭もった。
こるりはそもそもジェスがついてくるとは思いもしなかったのだ。「ごめんなさい、アースに好きな人がいるの」
それはジェスの為を思っての逃げ口半分、ちょっとした事実半分。しかしジェスはそれでもと言って現代についてきてしまった。
「そんなのは関係ねえ。こるりサンは俺達の世界の為に一生懸命だった。だから今度は俺がアースの為に何かしたいんだ」
「ジェスくん……」
「迷惑だって言われたってついてくからな!」しかし自宅のポストでこるりは衝撃の事実を知る事になる。
ギリギリに間に合い投函していた最終アクション、その結果が届いたのである。
「これを……」
こるりは千晶にそのリアクションを手渡した。
こるりのアースでの想い人、自分のPC『カインくん』は悪の前に屈し、絶命していた。
「わたしの、カインくんが〜……」
(これは重症だわ)
千晶は苦笑した。
「これで恋敵がいなくなったというわけね、ジェス」
「なんかすげー複雑なんだけど。俺」
相手がゲームのキャラクターだと言うのは確かになんとも言えない気分かもしれない。
しかし、なんと言う結末だろう。それはこるり以外のキャラクターは全て悪事を楽しんでおり、世界は闇の世界として緩やかに食い潰されていくと言う内容だった。ちょっとその神経が信じられない。
「千晶は最近どうなんだ?」
「うん。アツアツご飯にお母さんのお味噌汁、ばっちり食べれて満足〜!」
「そっか」
ジェスは複雑な表情を浮かべた。
「何?」
「いや、俺はさ。散歩がてらにこるりサンちの周囲を偵察してるんだけど」
「それってまずいよ。なんかストーカーみたいじゃない?」
「ストーカー? まあいいけど。で、なんかこの世界って嫌な感じがするんだよな。俺が慣れてないってだけかもしれねえけど」
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