Scene .2 アーウィンの想いより引用
「これが最後になるかもしれないんだ。手を抜いたら承知しないよ」
厨房は夕食の用意に忙しい。その指揮をとるのは彩薙姫だ。手際よく料理が次々と中央のテーブルに並べられていく。
「すごい。和食もあるんですね」
鹿原こるりが顔を覗かせる。
「そうだ。出来る限り故郷の料理を作ってやろうと思ってな。どうだ、ひとつ食べてみろ」
こるりはサンドイッチをひとつ取る。口にして野菜のみずみずしさに驚いた。篭城がこれだけ続いているのだ。新鮮な野菜など口に出来る機会は滅多にない。
「どうしたんです、この食材」
「ああ、このネックレスには物を新鮮な状態に戻す力があってな」
そう言って姫が取り出したネックレス『ナインティアーズ』は、今にも消えそうな弱々しい光を放っている。
「いいんですか、伝説のアイテムが力を失いかけてるって時に、こんなことに使ってしまって……」
「構わん」
姫は意に介した様子もなく笑った。
「今だけでも皆を笑顔にしてやること、それが料理人たる我のすべきことなのだから。しかしどうした。こるりが厨房に現れるなど」
「これを」
こるりが差し出したのは彼女がアースで遊んでいたというPBMのアクションだった。
「火種にでも使って下さい」
「いいのか、大切なものなのだろう?」
「ええ、もう最終アクションの締め切りは過ぎてしまいましたから」
「そうか……。そういえばこるりの羽根ペンとインク壷は未来を予見すると言ったな。この戦いの結末は尋ねてみたのか?」
「いえ、それはまだ」
無理もないな、と姫が微笑する。
「結果など見えてるようなものだからな」
厨房を出たこるりは、しかしふと気になって、一枚破り取ったアクションシートの裏に羽根ペンを走らせてみた。自分の意思に関わらず勝手にペン先が走り出す。
「これは……?!」
こるりの表情が変わった。その様子からしてまるで予見しなかった未来がそこに書かれているようだった。
(こんなはずない。きっとわたしのペンも力がなくなっておかしくなってしまったんだわ)
こるりはそう思い直した。
えっと……サンドイッチご馳走様でした。
さて、ハーブローク第0回(事前プレイ)は、本編とは別に、物語が最悪の結末を辿った場合のアナザーエンド、という体裁のリアクションです。
わたしが実際に提出したアクションは「恐怖に震えながら戦いの記録を後世に残す。城が陥落する時、自分の死に方をアイテムに占わせて結びとする」というような内容だったのですが、ダブルアクション気味だったり、神流 大さんの大活躍でアルトゥース城が陥落しないまま戦いが終了してしまったりしたためか、没でした。
アクションを提出する前から、今回のようなアクション内容では、最終的にPC側が勝ってしまったり、決着がつかないまま時間が撒き戻ったりするような結末では無効になってしまうかも知れない、という予感はあったのですが、的中してしまいました。
もしも城が陥落していれば、恐らくこの後のシーンに出てくるカノラさんや平賀 唯さんらと一緒に震えながら最期を遂げていたのではないかと想像します。
ただ、アクションの端々に書いた「書き溜めたアクションは燃やしてしまう」とか「結果は見えているので、アイテムに戦いの結末を尋ねることはしない。力がなくなってしまったと言い張る」とかいった小ネタが、リアクションの内容に合わせる形で採用されていました。PCアピールとしては成功しているし、これはこれで良かったかなと思います。
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